内部留保課税を分かりやすく嚙みくだいてみる

最近にわかに耳にするようになったこの言葉、

「内部留保課税」。

なんとも耳慣れない言葉です。

今回の2017衆院選の中で、希望の党の小池氏がこの言葉を発したことから、メディアに取り上げられるようになりました。

「消費税率の10%引き上げを凍結する代わりに、内部留保にかける税金を財源として活用する。」

その方針については迷走気味であるものの、希望の党としてはこのように考えているのです。

これが与党との1つの対立ポイントとなっています。ところで、そもそも「内部留保課税」ってどんな意味なのでしょうか?「内部留保」というワードから読み解いていきたいと思います。

内部留保って何のためのもの?

たとえば、バッグのセレクトショップを運営している会社のケースを考えてみましょう。

この会社が営業によって得られるお金は、バッグを販売したことにより得た売上高から、バッグの仕入代、お店の販売員や事務スタッフへのお給料、お店にかかる賃料や電気代といった経費を差し引いたものです。

さらに、その手元に残った金額に応じて、国や市町村から税金が徴収されるのです。税金が支払われた後、会社に残った金額がその年の最終的な利益です。

この最終的な利益の中から株主へ配当を支払い、残った金額を過去分から積み上げたものが「内部留保」と呼ばれています。昨今の円安などで企業の業績が改善しているため、「内部留保」もどんどん膨らんできていると言われています。

「内部留保」は全ての経費を支払った後の残りなので、「内部留保」が多いほど企業が自由に使えるお金が多いとも言えます。使い道はそれぞれですが、企業はたくわえた「内部留保」の中から、将来の利益増大のための投資を行ったり、はたまた手を付けずに将来起こりうる景気悪化に備えたりするのです。

「内部留保課税が二重課税になる」の意味とは?

内部留保が多い=企業の経営余力がある

このように考えて、希望の党は「内部留保」に対して税金をかけようと訴えているのですね。たしかに、業績が赤字になっている状態では、「内部留保」は増えません。「内部留保」が増えているというのは、それだけ企業がお金を獲得できているということなのです。

ですが、「内部留保」とは一度税金を支払った後に残った利益を積み上げたものです。そこにもう一度税金をかけるので、「二重課税」と表現されるのです。

”せっかく獲得した利益に2回も税金がかけられるとなれば、企業が国外に流出してしまうのではないか?”

こういったことなどが懸念され、批判も相次いでいるのです。

一方、希望の党は、こうも主張しています。

「「内部留保」に課税されないように、企業が設備投資や従業員への給料にお金を回す効果が期待できる」

希望の党の主張の穴とは?

実は、企業が稼ぎ出したお金を設備投資に回したとしても、その分内部留保が減るわけではないのです。

内部留保は、あくまで、今まで稼ぎ出した利益を積み上げた金額を表すからなんですね。今現在持っている現預金残高とは概念がまったく異なるのです。

たとえば、利益を毎年たくさん上げている企業が、その多くを投資に回している場合、内部留保は潤沢である一方で、現預金はそれほど多くないという事象も起こりうるのです。潤沢な内部留保に税金をかけられてしまうと、当然支払う税金も多くなります。その企業は、工場や機械を買った後のわずかな現預金残高から税金を支払わなくてはならないのです。

つまり、内部留保の金額だけを見ても、その企業が投資にお金をかけているかどうかは分かりません。「内部留保が多い=モノや人への投資を怠っている」わけではないのです。

 

そのため希望の党が企業に期待するような、

「「内部留保」に課税されないように設備投資を増やそう!」

という動きにはスムーズにつながらないことも考えられるのです。

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